サイエンスデイリー誌(2008年7月13日) より

バークレー研究所の科学者は、自然の最も精巧な機械の一部である三次元構造の全貌を初めて明らかにしました。それは内耳にあるクモの巣状のたんぱく質のフィラメントで、それによって聴覚とバランス感覚というものが可能になります。

彼らの業績は、どのように聴力が働くかということについて、より根本的な理解への扉を開きます。それは、あるタイプの治療方法の改良にも結びつく可能性があり、難聴の人の約10%の人に影響を及ぼします。

そのフィラメントは、音の機械的な振動を脳が解釈可能な電気信号に変えるのを助けてくれます。その幅はわずか4nmで長さ160nm(1nmは、1mの10億分の1)ですが、それらがたっぷり休んでいれば、世界は静かになります。フィラメントは、6桁に及ぶ刺激により作用する感覚システムの一部です。それを使って、人はピンが落ちたりジェット機が減速したりするのをフルパワーで聞くことができます。生物学と電気工学界における他のいかなる感覚システムにも、この妙技は不可能です。

「それは、体で最も美しさを賜ったシステムの一つです」と、バークレー研究所のライフサイエンス部のマンフレッド・アウアーは語っています。「しかし、それがどのように実際作用するかは謎のままです。我々の目標はそのシステムが何に似ているかを究明することなので、それがどのように機能するかについて究明する可能性があります。」

アウアーと同僚は、異なる角度で構造の数百ものイメージを取得して三次元合成写真に再現する、電子断層撮影をこのために利用します。その技術は、構造の非常に詳細なイメージを分子レベルで作り出します。

アウアーのチームが、聴覚システムにおいてマッピングされていない最後の構成要素のうちのの一つについてもっと知ろうと試みた約8年前まで、誰も電子断層撮影を聴覚研究に利用していませんでした。内耳は、感覚毛を生え始めさせる有毛細胞で内側が覆われています。これらの感覚毛は軽く上下に動き、液体の中では揺れています ― 風の下でたわむ小麦畑のように ― 鼓膜が音の波を吸収するためこのようになります。

さらに拡大すると、各々の感覚毛は不動毛とも呼ばれる個々の毛から構成されています。隣り合う不動毛は、糸状構造(tip link)としても知られるたんぱく質フィラメントによって結びつけられます。不動毛が揺れ動くとき糸状構造は伸びて少しの間破れ、プラスに荷電するイオンを有毛細胞へ流入させる形質導入チャンネルを開けます。これは、徐々に神経系に達する神経伝達物質を開放し始めます。このように、機械的な行動 ― 開いて覗き見るチャンネル ― は電気信号及び最終的には私たちが鳴き声、ビープ音や音として聞こえるものに変換されます。

「そのシステムはすごいです。しかし私たちは、何がその結びつきを構成するかについて本当にわかっているわけではありませんし、感覚毛がどのように分子レベルで動くかということについてわかっているわけではありません。」と、アウアーは言います。

アウアーと同僚が、草分け的に分子レベルで感覚毛を分析するために電子断層撮影を使ったおかげで、それは変わり始めています。これまでのところ、彼らは三次元で感覚毛の結びつきを再現して、結びつきの正確な長さの測定結果を得ています。

「構造細胞生物学における至高の目標の一つは、複雑なシステムの分子リストを得て、そのすばらしい機能を果たすためにタンパク質がどのように協働しているかについて示すことです。」と、アウアーは言います。「私たちは、感覚毛のためにそのようなリストを開発するよう努めています。」

その細胞の関係において、感覚毛の電子断層撮影の研究は、自然界と人間が作った世界で感覚毛の能力というものはどれほど類まれであるか、ということも研究チームが解読できるようにしています。たとえば、どのように、とても大きい雑音に順応することができ、それから、ささやきに気づくようにそれ自体を素早く再設定することができるのか?そして、どのようにして、ささやきに気づくのに十分な感度を持ちつけれども、全ての分子が鼓膜と衝突しているのに気づくほど過敏でない、ということを可能にするのか?

「そのシステムがこれ以上敏感であれば、空中で全ての分子があなたの鼓膜にぶつかるのが聞こえて、気がおかしくなってしまうでしょう。」と、最近取得したイメージが、有毛細胞の一連の電子断層撮影の調査における初めてのものであると付け加えながらアウアーが言います。

「私たちは、感覚毛が巧みな電気生理学実験を通してどのように作用するかよく知っていますが、私たちはもっと知る必要があって、そのために分子構造を究明する必要があります。」と、アウアーは言います。「最終的には、全ての機構を使って、この感覚毛全ての説明を得られるでしょうし、それがどのように機能するか-聴覚はどのように働くか-、ということに対する基本的な洞察を与えてくれるでしょう。」

この研究は、国立衛生研究所、全米科学財団とエネルギー省によって資金提供を受けました。Journal of the Association for Research in Otolaryngology の2008年6月9日号で報告されました。